肝胆膵第76巻第4号
NAFLD/NASHの疫学・予後
電子書籍のみ
- 谷合 麻紀子(東京女子医科大学)
- 発行日:2018年04月28日
- 〈要旨〉
Nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD)/nonalcoholic steatohepatitis (NASH)は肥満・生活習慣病と深い関連のある病態で,メタボリック症候群を高率に合併する.一部地域を除く全世界的に,肥満人口の急増とともに増加し,最も重大な健康障害の一つとなった.特に有病率が高いのは中東,南米で一般人口の30%を超える有病率を呈している.わが国の一般成人健診受診者における腹部超音波など画像検査で診断したNAFLDの合併率は,男性で約40%,女性で約20%と報告され,男性では漸増傾向,女性では横這いからわずかに減少傾向を示している.わが国における小児NAFLDの有病率は,約5%と報告され,成人と同様に肥満がNAFLDの独立危険因子とされる.肝生検により診断され進行性の病態とされるNASHは,NAFLDの約10〜20%を占め,非進行性とされるNAFLとNASHは病態の移行を認めることから,近年同一疾患の別時相と捉える考えが主流となった.NAFLD/NASHにおける肥満・生活習慣病合併の状況には,性別・年齢別の特徴があり,若年男性症例では脂質異常症,若年女性症例では高度肥満,閉経後の高齢女性では2型糖尿病合併が特徴的である.非肥満者におけるNAFLD合併も重大な問題である.NAFLD/NASHの発症・病態進展の主たる基盤はインスリン抵抗性であり,その発症や重症化にpatatin-like phospholipase domain containing 3(PNPLA3)遺伝子多型などの遺伝的要因が関与する.
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Epidemiology of nonalcoholic fatty liver disease/nonalcoholic steatohepatitis
谷合 麻紀子
東京女子医科大学消化器内科学