臨床精神医学第52巻第5号
双極性障害治療の目指すべきゴールとは
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- 小笠原 一能(名古屋大学)
- 発行日:2023年07月28日
- 双極性障害(BD)は臨床的にも社会的にも重要な疾患である。一般に慢性疾患の治療を円滑に進めるためには医師・患者間で治療ゴールが共有されている必要がある。BDの治療ゴールとしてはまず症状面の改善,すなわちエピソードの寛解達成と再発再燃防止があげられるが,これと患者の心理社会的機能および生活の質(QoL)の改善は必ずしも並行しない。さらに近年,患者自身が主体的に幸福な人生を追及する視点から,「その人自身の回復」(personal recovery)という概念が重視されるようになっている。BDの治療ゴール設定にあたっては,そこに機能・QoL改善・回復の視点を含めることが望まれる。しかし一方で患者の主観的良好感だけに着目すると,躁/軽躁病エピソードやその等価物をコントロールすべき対象として客観視できなくなることが懸念されるため,医師は心理教育・精神療法を通じてこの問題点の客観化を促していく必要がある。共同意思決定(SDM)を積極的に目指すべきゆえんである。
詳細
What is the goal of the treatment of bipolar disorders?
小笠原 一能*1,2
*1名古屋大学医学部附属病院卒後臨床研究・キャリア形成支援センター
*2同 精神科