臨床精神医学第47巻増刊号
精神症状と間違えやすい副作用
電子書籍のみ
- 石井 沙安也ほか(獨協医科大学)
- 発行日:2018年12月28日
- 〈抄録〉
気分障害の治療に用いる抗うつ薬や気分安定薬による副作用の中には,精神症状と間違いやすい副作用が多く存在する。向精神薬の共通の副作用として,眠気や鎮静過多,認知機能障害などの中枢神経系への有害反応がある。三環系抗うつ薬は抗コリン作用によるせん妄や幻覚症状を認めることがある。選択的セロトニン再取り込み阻害薬はセロトニン作用により内服開始時や増減・中断に際し逆に不安・焦燥感が増強することがあるのに加え,稀ではあるがアカシジアによる焦燥感の出現もみられる。また,双極性障害の抑うつ相の患者に抗うつ薬を用いると,躁転する危険性がある。バルプロ酸は,高アンモニア脳症による意識障害や行動異常,炭酸リチウムでは抑うつ症状や,中毒による傾眠・興奮がある。いずれも薬物による副作用の可能性を考慮しないと誤った治療選択を行う恐れがあるため,薬物治療中に新たな精神症状が生じた場合は,常に副作用の可能性を念頭に置く必要がある。
詳細
Side Effects that could be misdiagnosed as psychiatric symptoms
石井 沙安也 岡安 寛明 下田 和孝
獨協医科大学精神神経医学講座