臨床精神医学第49巻第2号
自閉スペクトラム症の診断例の増加とその要因
電子書籍のみ
- 村上 寛・他(信州大学)
- 発行日:2020年02月28日
- 〈抄録〉
自閉症の頻度は,長く0.04 ~ 0.05%というのが定説であった。しかし,最近の自閉スペクトラム症(ASD)の頻度は世界各国で1%を超えている。本稿では,ASDの診断例の増加について①ASDの真の頻度は増加していないが,診断例が増加した可能性と,②ASDの真の頻度が増加しており,その結果診断例が増加した可能性の両面から検討した。①では,Wingらによる自閉症概念の拡大,さらにスペクトラム概念の導入という2段階の診断概念の拡大,知識の浸透などによる検出感度の向上,方法論の改良による精度の向上について述べた。②では,ASDの真の頻度が明らかに増えたと断言できる証拠はいまだないが,仮説として今後の検証を要するものがいくつかあることを述べた。ASDの診断数は確実に増加してはいるが,ASDの真の頻度の増減の議論のためには今後も厳密な方法で発生率を調べ,データを蓄積していくことが肝要である。
詳細
The “rise” of cases diagnosed with autism spectrum disorder
村上 寛*1 本田 秀夫*2
*1 信州大学医学部附属病院精神科
*2 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室