臨床精神医学第49巻第2号
ジェンダーとトラウマをめぐる今日的課題
電子書籍のみ
- 宮地 尚子・他(一橋大学)
- 発行日:2020年02月28日
- 〈抄録〉
トラウマは,個人の精神病理として捉えられがちだが,実際には戦争や犯罪,事件などの社会的事象と密接につながっている。個人のトラウマを通して,背景にある差別や抑圧など,文化や社会の問題があぶり出されることも多い。日本では,1990 年代後半以降, PTSDの概念やこころのケアについて社会に共通理解が広がってきている。そのような状況で,精神科医全般に,PTSDの診断や治療ができるようになることが求められている。その場合,ジェンダーとセクシュアリティの視点は欠かすことができない。そこで,本稿では,ジェンダー規範とトラウマとの関係,性暴力被害やDV被害のメンタルヘルスへの影響,二次被害の問題,男性の性被害や性的マイノリティとトラウマの関係などについて論じる。臨床精神科医は,適切な診断と治療のために,精神医学的知識に加え,トラウマとジェンダーをめぐるこれらの問題について,ポイントを押さえて理解しておくことが重要である。
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Current situations and issues of gender and trauma
宮地 尚子 木村 美緒
一橋大学大学院社会学研究科