臨床精神医学第49巻第2号
境界性パーソナリティ障害の今後の展望
電子書籍のみ
- 林 直樹(帝京大学)
- 発行日:2020年02月28日
- 〈抄録〉
パーソナリティ障害(Personality Disorder: PD)の概念と診断は現在,大きな変動に見舞われている。本論では,わが国の精神科医によって語られる「境界性PD(Borderline PD: BPD)が減っている」という言説を出発点として,それが生まれた要因としてPD概念の問題点・特性やわが国のPD診療体制の遅れなど課題について検討を加えた。次いでPD概念においてそれをディメンションとして捉える視点が徐々に浸透し,2018年発表の国際疾病分類第11改訂版においてPDタイプとして残されているのはBPDのみとなっているという変化の流れを振り返りつつ,精神科疾病論におけるPD概念の位置づけを確認した。最後にこれらの議論に基づいてPD概念を現在の精神科臨床に活かすために,他の精神障害の合併を前提としてPDを捉えること,つまりPDおよびBPDが付加的な診断として活かされるべきこと,そしてPDが発達期心的外傷や発達障害が関与する複雑なケースの把握・治療の手がかりとなる可能性があることを指摘した。
詳細
Concurrent perspective on borderline person ality disorder
林 直樹
帝京大学医学部精神神経科学講座