肝胆膵第77巻第3号
慢性炎症と胆道発癌−病理学的視点から−
電子書籍のみ
- 全 陽(神戸大学)
- 発行日:2018年09月28日
- 〈要旨〉
炎症が持続すると上皮細胞に遺伝子異常が蓄積して発癌プロセスが進行する.異形成,上皮内癌,浸潤癌といった多段階発癌の組織形態の変化は分子異常の蓄積を反映している.しかし,慢性炎症は遺伝子異常を誘発するだけでなく,発癌を促進する環境変化にも関連していると考えられる.最近の報告では,それ単独では腫瘍発生を誘導できない遺伝子異常でも,IL-33などの炎症性メディエーターを加えると癌が発生することが示された.ヒトの大型胆管に発生する胆管癌でもIL-33が高発現している症例があり,そういった症例は予後が良好である.IL-33高発現の胆管癌は遺伝子異常の数が少なく,それゆえより悪性度が低いのかもしれない.
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Chronic inflammation and biliary carcinogenesis −pathological aspects−
全 陽
神戸大学病理ネットワーク学