臨床精神医学第45巻第7号

- 特集/自己受容・肯定感と精神科臨床
- 発行日:2016年07月28日
- 〈企画趣旨〉
誰にとっても,自分や自分の人生を肯定的に受け止められれば,それにこしたことはありません。ところが,精神科領域ではしばしば,mental disorderによって患者さんの自己受容・肯定感が妨げられたり,自己受容・肯定感が妨げられていることによって患者さんのmental disorderが発症・増悪します。その一方で,自己受容・肯定感によって,いろいろな苦難を乗り越えていく患者さんもおられます。ちなみに,臨床心理学の領域では,「自己肯定感」という用語より「自己受容(セルフアクセプタンス)」がしばしば用いられてきたようです。手元の辞典では次のように書かれています。
「自己受容」
・自分自身を,好ましい面も好ましくない面も含めて受け容れること
(飯長喜一郎:「人間性心理学ハンドブック」,創元社,2012年)
・あるがままの自分を嫌悪しないこと。………カウンセラーの受容的な態度は,クライエントがそれまで目をそむけ嫌悪していた自己の側面を再び見つめ直し,次第に自己受容していくプロセスを生み出す。そこからより統合的・全体的な自己変革・自己成長がはじめて可能となる。………
(末武康弘:「カウンセリンク辞典」,誠信書房,1990年)
より確かな「自己肯定感」は,こうした「自己受容」を経て生じるのではないか,またそこに至るには「他者からの受容」を必要とするのではないかと思われます。精神科医療にたずさわる者にとって,「自己受容」・「自己肯定感」に関する知識・素養・面接技能は必須であると思われますが,真正面からこれが論じられる機会はあまりありません。そこで本特集を企画した次第です。
詳細
〈目次〉
自己肯定感と自己受容 (明治大学)諸富 祥彦
自己肯定感の危機にある子どもにわれわれはなにができるか (渡邊醫院)渡辺 久子
子どもの自己肯定感を高める発達障害支援 (埼玉医科大学)横山 富士男
ひきこもりと自己受容・自己肯定感の臨床 (筑波大学)斎藤 環
女性の自己受容・自己肯定感と精神科臨床 (国際医療福祉大学三田病院)平島 奈津子
家族・夫婦関係における受容と肯定感の臨床 (中村心理療法研究室)中村 伸一
認知症の自己肯定感を回復する─精神療法と「治さなくてよい」視点─ (日本医科大学)上田 諭
自殺の危険と自己肯定感 (筑波大学)高橋 祥友・他
統合失調症回復への希望と主体価値の確立 (帝京大学)池淵 恵美
うつ状態の認知療法と自己受容・自己肯定感 (群馬病院)山市 大輔・他
マインドフルネスによる自己受容 (早稲田大学)越川 房子
森田療法と自己受容・自己肯定感 (森田療法研究所北西クリニック)北西 憲二
精神科薬物療法と患者の自己受容・自己肯定感 (大泉病院)澤田 法英
シリーズ/日本の精神医学を築いた人々〔第6部〕
中田 修─日本の犯罪精神医学の泰斗─ (東京工業大学)影山 任佐
研究報告
せん妄のマネジメントにおけるアリピプラゾールの有用性─過活動型せん妄に対する有効性と安全性の検討─ (帝京大学)赤羽 晃寿・他
セルトラリンとミルタザピンの併用療法により,早期に寛解した重症老年期うつ病の2症例 (呉医療センター)西村健一郎・他