臨床精神医学第45巻第7号
認知症の自己肯定感を回復する─精神療法と「治さなくてよい」視点─
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- 上田 諭(日本医科大学)
- 発行日:2016年07月28日
- 〈抄録〉
老年期は若年時のような社会のなかの役割と価値を認められなくなる時期であり,生き生きと生活するうえで必須の自己肯定感を見失いやすい。社会の人々が老年期の人の過去の業績や生き方に敬意を払うことを忘れがちなことも影響している。とくに認知症の人は,周囲から否定的にみられることが多く,自己肯定感を失いがちである。認知症に根治療法のない現状で,その臨床においてもっとも重要な治療目標は,認知機能低下の回復や維持ではなく,自己肯定感を回復し,張り合いのある生活を取り戻すことである。周囲は本人を否定せず,「治さなくてよい,そのままでよい」という見方をすべきであり,診療の場では,認知症本人との対話すなわち精神療法が不可欠である。介護者の話を聞く前に,本人と向き合い,現在の思いと生活やこれまでの人生に耳を傾けたい。それは本人にとっても貴重な体験となり,不安と反発を抱え存在すら動揺しかねない認知症の人にとって自己肯定感の回復の大きな助けになる。
詳細
It is clinically more essential for dementia people to regain their self-efficacy: psychotherapy for them and clinicians' attitude of not trying to enhance their cognitive functions.
上田 諭
日本医科大学精神医学教室