臨床精神医学第51巻第5号
精神科領域における脳脊髄液検査の意義
電子書籍のみ
- 服部 功太郎(国立精神・神経医療研究センター)
- 発行日:2022年05月28日
- 〈抄録〉
脳脊髄液は脳組織と連続しているため脳由来の分子を含んでおり,近年の分子測定技術の進歩によって脳神経疾患の臨床検体として再注目されている。アルツハイマー病については髄液中のリン酸化タウ蛋白質の検査がすでに保険収載されている。アミロイドβ42ペプチドの検査についても精度の高い測定法が登場し,今後アルツハイマー病による軽度認知障害の診断にも応用できる。また,統合失調症との鑑別がしばしば問題となる抗NMDA受容体抗体脳炎に対して,髄液検査による自己抗体の確認が可能である。腰椎穿刺は侵襲性が高いと考えられているが,局所麻酔を工夫し,無外傷性針を使用することで,より安全な検査が実施できる。今後,脳脊髄液中の分子解析が進むことで,精神疾患診療に貢献できる髄液検査のレパートリーを増やすことが期待される。
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Cerebrospinal tests for psychiatric disorders
服部 功太郎
国立精神・神経医療研究センターメディカル・ゲノムセンターバイオリソース部