臨床精神医学第50巻第11号
長期的展望に基づく睡眠障害診療
電子書籍のみ
- 長尾 賢太朗・他(国立精神・神経医療研究センター)
- 発行日:2021年11月28日
- 〈抄録〉
睡眠は生命維持に重要な機能を担う。このため,睡眠障害はさまざまな身体健康・精神医学的リスク,社会生活上の支障を生じるが,年代ごとに好発する疾患や,健康・精神・社会機能におよぼす影響は異なる。学童期以前に生じる睡眠障害は,主に未発達な睡眠構造に起因することが多い。児童・思春期には過眠症および睡眠相後退障害が問題となる。勤労世代には社会活動の重要性が高まるにつれ,睡眠不足の問題が深刻化するとともに,不眠症も増加し始める。さらに,閉塞性睡眠時無呼吸やむずむず脚症候群等の発症率が増加する。老年期になると,不眠症がさらに増加するとともに,加齢の影響から多様な睡眠障害の有病率が増加する。これら睡眠障害の悪化・遷延は,健康リスクを増強させるのはもちろん,各世代特有の社会・認知機能障害を惹起し,不可逆的な影響を生じ得る。このため,各年代に応じた適切な評価と長期的視点に立った治療介入が重要である。
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Long-term perspective of treatment for sleep disorders
長尾 賢太朗 栗山 健一
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部