臨床精神医学第50巻第11号
前頭側頭型認知症の長期的展望
電子書籍のみ
- 河上 緒・他(東京都医学総合研究所)
- 発行日:2021年11月28日
- 〈抄録〉
前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD)は元来Pick病と呼ばれ,前頭葉と側頭葉における限局性脳萎縮を伴い,行動変容や精神・神経症状が主体の臨床経過,転帰を呈する一群の変性疾患である。若年性に発症することから,統合失調症などの精神疾患との誤診も多いが,神経画像や臨床症候を経時的に追うことで診断精度をあげることができる。近年,神経病理学的・分子遺伝学的研究の飛躍的な進歩により,生物学的側面が明らかになっている一方で,根本的な治療薬はいまだ見いだされておらず,非薬物療法やケアが治療の主体となる。常同行動を示す行動障害型前頭側頭型認知症では,道具的な認知機能が保持される臨床上の特徴を活かし,作業,料理,編み物などを1日の日課に組み入れるルーティン化療法が有効であり,意味性認知症患者の支援においては,言語リハビリテーションが有用である。
詳細
Long-term prognosis in frontotemporal dementia
河上 緒*1 品川 俊一郎*2
*1公益財団法人東京都医学総合研究所脳・神経科学研究分野認知症プロジェクト
*2東京慈恵会医科大学精神医学講座