臨床精神医学第50巻第11号
アルコール依存症の長期的展望
電子書籍のみ
- 湯本 洋介・他(久里浜医療センター)
- 発行日:2021年11月28日
- 〈抄録〉
アルコール依存症の疾患背景としての不均一性(heterogeneity)のため,それぞれのケースでの予後や経過,また回復像はさまざまである。一方でアルコール依存症の治療目標は原則的に断酒の達成とその継続であるとされており,断酒治療後の最初の3か月では再飲酒が生じやすいが,1年を超えた断酒の期間が続くほど再飲酒率は低下していくという報告がある。数年以上の断酒の継続や良好な予後には人間関係の中に身を置くことや自助グループの存在がその支えになる可能性が指摘されている。アルコール依存症の自然回復(natural recovery)については,治療に関わらずとも長期の断酒あるいはリスクの低い飲酒パターンを維持できる例は一定数存在する。アルコール依存症のサブタイプ別にみた長期経過について,今後の調査が期待される。断酒後の回復の経過で生き方の転換が図られることが理想的だが,それぞれの生き方やQOLに合った多様な回復像を受け入れ,支援していく姿勢が重要である。
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The long course of alcohol dependence
湯本 洋介 樋口 進
国立病院機構久里浜医療センター精神神経科