肝胆膵第78巻第3号
カルニチン製剤
電子書籍のみ
- 中西 裕之,他(武蔵野赤十字病院)
- 発行日:2019年03月28日
- 〈要旨〉
L-carnitineはリジンとメチオニンから合成されるアミノ酸様物質であり,全身で長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込み,β酸化へと誘導する輸送体としての役割を担う.肝臓では,尿素サイクルを活性化することによりアンモニアの代謝が促進する.したがって,L-carnitine投与は血中アンモニア値を低下させ,肝性脳症を改善する.また,L-carnitineの脳への直接的作用についての検討では,脳のアストロサイトはL-carnitineを用いてケトン体を生合成し,エネルギー基質としてニューロンへ供給することが知られている.さらに,脳内でアストロサイトもNH4+を分解するが,その際に代謝産物による浸透圧上昇で浮腫を呈したり,またGABAレセプターの機能異常や3-methyl-2-oxovaleric acidなどの神経毒性物質の蓄積が報告されているが,これらはL-carnitine投与で改善が得られる可能性がある.また,長鎖脂肪酸がβ酸化を受けて産生されるacetyl CoA とL-carnitineから,acetyl-L-carnitineが合成され,神経伝達物質acetylcholine の産生を促す.L-carnitine は肝硬変患者において肝臓のみならず,アストロサイトを含む全身の臓器の代謝を改善する可能性があり,肝性脳症改善,エネルギー低栄養対策として重要である.
詳細
L-carnitine improves hepatic encephalopathy
中西 裕之*1 黒崎 雅之*1 大澤 玲於奈*1 久保田 洋平*2 金子 俊*1 玉城 信治*1 土谷 薫*1 板倉 潤*1 泉 並木*1
*1武蔵野赤十字病院消化器科
*2国立がん研究センター東病院消化管内科