臨床精神医学第53巻第4号
認知症における神経炎症の可視化と治療制御
電子書籍のみ
- 樋口 真人(量子医科学研究所)
- 発行日:2024年04月28日
- 〈抄録〉アルツハイマー病などの神経変性型認知症では,アミロイドβペプチド(Aβ)やタウ蛋白などの凝集体が中核病理を形成する。脳内で炎症性変化を担うミクログリアとアストロサイトの活性化は,蛋白凝集体と,神経細胞死の双方と密接な関連性を有する。ミクログリアやアストロサイトは,恒常性維持タイプと神経細胞攻撃タイプに大別されることがあるが,疾患や進行段階によって生じるグリアの活性化を二極化で説明するのは難しい。神経炎症の理解とその治療法の開発において,ポジトロン断層撮影(PET)による炎症関連分子の生体脳画像技術は重要なツールとなり得る。ミクログリアのトランスロケーター蛋白やアストロサイトのモノアミンオキシダーゼBなどを可視化するPETプローブの開発が進展したが,モデル動物とヒトで有用性の高い神経炎症PETプローブの確立が課題であり,そのための研究開発が進行中である。
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Visualization and therapeutic control of neuroinflammation in dementias
樋口 真人
量子科学技術研究開発機構量子医科学研究所脳機能イメージング研究センター