臨床精神医学第52巻第4号
クロザピンの作用機序
電子書籍のみ
- 國井 泰人・他(東北大学)
- 発行日:2023年04月28日
- 〈抄録〉
クロザピンは治療抵抗性統合失調症に対する現時点で唯一の薬剤選択肢としてその恩恵は計り知れないが,一方で無顆粒球症,心筋炎などの重篤な副作用を生じ得るため,厳重な管理を要する。したがって,クロザピンと同様の作用を持ち,重篤な副作用のリスクが少ない薬剤の開発が強く望まれるが,50年以上にわたる長年の使用経験を経てさまざまな研究が行われてきているものの,この薬剤の作用機序については不明な部分が多い。しかし,これまで行われてきた数多くの基礎,臨床双方の研究によって,クロザピンの作用機序について,受容体レベル,細胞内シグナル伝達レベル,シナプスレベル,脳構造および機能レベルでさまざまなことがわかってきている。本稿では,このクロザピンのマルチモーダルな作用を各観点から概括し,筆者らが最近報告したクロザピンの新規標的に関する研究を紹介し,クロザピンのユニークな作用機序に迫ることを目的とする。
詳細
Mechanism of action responsible for superior efficacy of clozapine
國井 泰人*1 日野 瑞城*1 富田 博秋*1,2
*1東北大学災害科学国際研究所災害精神医学分野
*2東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野