臨床精神医学第51巻第12号
私たちが外来で行っていること
電子書籍のみ
- 西條 朋行・他(西條クリニック)
- 発行日:2022年12月28日
- 〈抄録〉
診察室以外の待合室や,地域におけるわれわれの試みを,広義の精神科外来と捉えて紹介した。種々の臨床実践からは,社会,職場,学校,医療における疎外状況や,その状況において捨象されがちな個々の事情を窺い知ることができた。それらの知見について,能動的な科学的知では捉えきれない<現実>の複雑さを,受動的な能動において捉える「臨床の知」という概念に沿って考察した。新型コロナウイルスの蔓延や,ロシアのウクライナ侵攻により,万人が受苦の立場を強いられる現状において,今後メンタルクリニックの役割はますます大きなものとなっていくと思われる。地域に密接したメンタルクリニックには,単純化できない個々の事情を,「臨床の知」を行使して引き受けていくこと,それにより「医者と患者」のような二人の人間の単なる邂逅ではなく「われわれ」という多数性の次元における効力感や主体性が感じられる喜びが得られる場となることが求められる。
詳細
Our clinical practices at community-based mental health clinic
西條 朋行*1,2 土田 朝美*1 大川 ふみ*1
*1西條クリニック
*2東京藝術大学大学院映像研究科