臨床精神医学第51巻第9号
強迫症と不安─強迫症はなぜ不安症から独立したのか─
電子書籍のみ
- 松永 寿人(兵庫医科大学)
- 発行日:2022年09月28日
- 〈抄録〉
強迫症(OCD)と不安との関係性について,DSM-Ⅲに至るまでは,Freudが確立した神経症概念に則った“強迫神経症”として不安や葛藤などの心理的機制が重視されてきた。1980年のDSM-Ⅲ改訂でOCDとなり,病的不安を中核病理として共有する不安障害の一型とされ,DSM-IV-TRに至るまでの間,OCDはここに分類されていた。しかしその後,OCD内の異種性や遺伝学的あるいは生物学的研究知見が集積される中で,これを不安障害として捉えることの限界が明らかとなっていった。このため2013年に改訂されたDSM-5において,OCDは不安症群から分離され,「とらわれ」や「繰り返し行為」を共有する“強迫症および関連症群”という新たなカテゴリーの中核に位置づけられている。このような約100年間にわたるOCDの診断的位置づけをめぐるパラダイムシフトは,各時代におけるOCDの発症機序や精神病理,神経生物学的病態理解の時間的変遷を反映するとともに,OCDの拡がり,その多様性や重層性を示唆するものと考えられる。
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A review on obsessive-compulsive disorder focusing on the recent categorical changes from anxiety to obsessive-compulsive spectrum
松永 寿人
兵庫医科大学医学部精神科神経科