臨床精神医学第51巻第9号
精神分析における不安をめぐる一考察
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- 吾妻 壮(上智大学)
- 発行日:2022年09月28日
- 〈抄録〉
本稿では,精神分析における不安について,その多義性に着目しつつ考察する。精神分析においては不安という言葉は広く用いられている。それはフロイトが量をもつ心的エネルギーの存在を想定し,それによって精神病理を説明しようとしたことの影響による。フロイトは不安の力動についての考察を行い,二つの不安理論を提示した。ストレイチーはパニック発作における不安について量的な考察を行った。クラインは,フロイトとは異なる観点から,リビドーと死の本能の相克に不安が由来すると考え,迫害不安と抑うつ不安について論じた。近年,不安の根底にあるとされてきた精神内葛藤以前の病理が精神分析プロセスの中で注目されるようになった。エナクトメントの概念は,そのような病理の理解に通じる概念として重要である。
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A study on anxiety in psychoanalysis
吾妻 壮
上智大学総合人間科学部