臨床精神医学第50巻第6号

日本(113年間)および海外5か国(65年間)の年齢別自殺率, その長期的・短期的変動─「自殺率世代マップ」からの所見と考察─

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  • 豊嶋 良一(埼玉医科大学)
  • 発行日:2021年06月28日
  • 〈抄録〉
    1)「疾病動向予測システム(東京都健康安全研究センター)」による「自殺率世代マップ」は,数十年以上の長期間のどの時期に,どの年齢層で,どの程度に自殺率が高かったかを,1枚の疑似「山岳地形図」として示したものである。この図を用いて,わが国113年間と海外5か国65年間の自殺率動態を観察した。2)わが国の「マップ」上では,高齢期層,壮年期層,思春期・青年期層において,それぞれ特徴ある経年的変動を示す「高自殺率山脈」が目視で分別・同定された。3)年齢別自殺率の経年変動は,明治期以来の近代化(資本主義化と個人主義化)で生じたポジティブ面(自殺抑止因子)とネガティブ面(自殺促進因子)の長期的拮抗関係で生み出された長期トレンドおよび景気変動と戦時心理で生じた短期変動の重畳で説明できると考えられた。4)計6か国の自殺率動態を通覧すると,高齢期層での近年の自殺率低下,壮年期層での顕著な短期的変動,青年期に長期持続する一定の自殺率など,諸国間での共通点がいくつか見いだされた。5)明治期に始まった社会の近代化で失われた最も大切な自殺抑止因子は,おそらく家族・血縁・地縁共同体というコミュニティの温かい絆だったと思われる。今日の自殺予防にあたって,困窮する当事者が,支援するさまざまな行政・福祉・医療担当者たちと温かい心の絆で結ばれているという実感を持てるかどうかは,極めて大切なことではないだろうか。

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Long-term and short-term fluctuations in suicide rates in Japan and five other countries observed in the Generational Suicide Rate Map
豊嶋 良一
埼玉医科大学名誉教授