臨床精神医学第54巻第9号
緩和ケアにおけるスピリチュアルペインとデモラリゼーション
電子書籍のみ

- 中川 東夫(恵寿総合病院)
- 発行日:2025年09月28日
- 〈抄録〉
がん患者とその家族の苦悩や苦痛をやわらげ,生活の質の向上を図ることは,緩和ケアにおける重要な課題である。終末期がん患者が直面する苦痛には4 つの要素(身体的・精神的・社会的・スピリチュアル)が深く関わり,これらの苦痛が互いに影響し合いながらトータルペインとして表出される。なかでもスピリチュアルペインは,苦しみや生きる意味への問いかけ,自分の存在や価値観の喪失,希望と目的の喪失を感じる苦痛体験として知られている。一方,ストレス対処に失敗し続けた結果,無力感,孤立感,絶望感などが生じた心理状態はデモラリゼーションと呼ばれる。デモラリゼーションはがん患者でもしばしば出現し,がんの症状や治療,再発や転移などに対処できない状況を繰り返すことで誘起され,人生の意味や目的の喪失感として体験される。そのため,スピリチュアルペインとデモラリゼーションは,がん患者の多様で複雑な苦悩を包括的に捉え,患者の包括的ケアを考えるうえで欠かせない徴候といえる。本稿では,スピリチュアルペインとデモラリゼーションの概念を論じ,2症例のがん患者における臨床経過および治療過程を通して両徴候を検討し,その対応と対処法について考察した。
詳細
Spiritual pain and demoralization in palliative care
中川 東夫*1,2
*1社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院
*2 MENTAL OFFICEパ・マルクリニック