臨床精神医学第54巻第9号
日本のメンタルヘルス─世界との比較─
電子書籍のみ

- 谷藤 貴紀・他(UT Health San Antonio)
- 発行日:2025年09月28日
- 〈抄録〉
本稿では,メンタルヘルスの国際的課題について,自殺率,幸福度,1人当たりGDPといった3つの指標を用いて国際的な比較を行い,その後,日本とアメリカに焦点を当てた。幸福度や経済的豊かさとメンタルヘルスとの関連性は一様ではなく,文化,社会制度,価値観といったマクロ的要因が複雑に絡み合っていることが,各国のデータから示唆された。アメリカにおいては精神疾患の生涯有病率が高く,社会的認識や心理的受容度は進展しているものの,制度的アクセスの障壁が依然として深刻である。一方,日本では制度整備は進むものの,文化的な背景や現場レベルでの意識改革の必要性など,ソフト面での課題がある。SNSの影響を含めた現代社会特有の要因も,若年層を中心に心理的に強く影響を及ぼしており,メンタルヘルスの構造的リスクとなっている。こうした現状をふまえ,マクロ的な制度設計と並行して,これからの日本のメンタルヘルス対策において家庭や地域,教育現場といった小規模な単位に対する介入が必要である。
詳細
Mental health in Japan - a comparison with the world
谷藤 貴紀*1,2 菱本 明豊*2
*1 Department of Pharmacology UT Health San Antonio
*2神戸大学大学院医学研究科精神医学分野