臨床精神医学第52巻第9号

アルツハイマー病に対する疾患修飾薬の開発状況

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  • 岩坪 威(東京大学)
  • 発行日:2023年09月28日
  • 〈抄録〉
    アルツハイマー病(AD)の疾患修飾療法(disease-modifying therapy:DMT)の奏効には,脳の病理学的変化が進行して認知症症状が完成する以前の,軽症期を対象とすることが重要である。そこで,画像・バイオマーカーなどの客観評価法を駆使して,軽度認知障害(MCI)期など早期段階におけるDMT実用化を目標に,大規模観察研究ADNeuroimaging Initiative(ADNI)が米国で開始された。日本でもJ-ADNIはMCIを中心に537例を登録・追跡し,その完遂によりアミロイドPETなどの評価体制が確立され,アミロイド陽性MCI(プロドローマルAD)における臨床経過の日米での高い類似性が実証された。2023年には抗Aβ抗体医薬lecanemabが早期AD(プロドローマル期+軽症認知症期)を対象に第Ⅲ相治験に成功,米国で薬事承認を取得し,ついでdonanemabも第Ⅲ相試験が成功,本邦を含む各国での臨床実用も間近となった。ADのDMT治験は,さらに早期段階の無症候期(プレクリニカル期AD)を対象に展開されつつあり,治験参加に適格な条件を満たす参加者からなる「トライアル・レディ・コホート(TRC)」として本邦ではJ-TRC研究が開始された。このような研究基盤に立脚して,今後ADのDMT開発はさらに急速に進歩するものと期待される。

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Development of disease-modifying therapies against Alzheimer’s disease: current status
岩坪 威*1,2,3
*1東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野
*2東京大学医学部附属病院早期・探索開発推進室
*3国立精神・神経医療研究センター神経研究所