臨床精神医学第52巻第9号
疾患修飾薬と超早期告知の課題
電子書籍のみ
- 和氣 大成(The Oxford Uehiro Centre for Practical Ethics)
- 発行日:2023年09月28日
- 〈抄録〉
アルツハイマー病の病態生理学的な変化は,発症する20年以上前から始まる。今後もこの前臨床期を対象とした臨床研究が世界中で加速するとみられる。しかし現段階では,根本治療薬・予防法は確立されていない。このはざまゆえ,バイオマーカーによる超早期の診断・告知には,pre-caregiver(認知症の人の介護者となるリスクが上昇した者)をはじめ多くの倫理・法・社会的な課題が山積しており,それぞれについて実証的な研究がわが国で行われることが望まれる。また,発症リスクという確率の概念がますます診断の中核に組み込まれつつある現在,超早期診断・告知に関して医学的対処可能性が前提とされることによる課題も顕在化してきた。欧州型の生命倫理の四原則や,リカバリー・ムーブメントにおける当事者の価値を支える科学的研究のあり方など,多様な視座に立った医療の更なる深化が期待される。
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Preclinical Alzheimerʼs disease biomarker disclosure at the dawn of disease-modifying therapies
和氣 大成
The Oxford Uehiro Centre for Practical Ethics