臨床精神医学第51巻第6号
物質依存症のゴール設定をどう考えるか
電子書籍のみ
- 松本 俊彦・他(国立精神・神経医療研究センター)
- 発行日:2022年06月28日
- 〈抄録〉
物質依存症の治療では,他の精神障害に比べて厳格なゴールが設定される傾向がある。たとえば,統合失調症治療では,「幻聴」という症状の完全消失よりも,日常生活機能や社会的機能,さらには主観的満足度が重視される。ところが,依存症の場合には,援助者は物質使用という症状の完全消失を追求し,その結果,依存症患者から再飲酒・再使用を聞かされた援助者の落胆ぶりは,統合失調症患者から久しぶりに幻聴の再発を聞かされた際の比ではない。本稿では,依存症治療のゴールがかくも厳格となってしまう背景を検討するとともに,筆者らが特に専門とする薬物依存症を取り上げ,そのような厳格なゴールが作り出した治療モデルについて振り返った。そのうえで,筆者らが考える治療ゴールについて私見を述べた。
詳細
What are the goals of substance abuse treatment?
松本 俊彦*1,2 船田 大輔*1,2 沖田 恭治*1,2,3
*1国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部
*2国立精神・神経医療研究センター病院精神診療部
*3国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター