臨床精神医学第50巻第7号

心の哲学からみた嗜癖性障害

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  • 信原 幸弘(東京大学)
  • 発行日:2021年07月28日
  • 〈抄録〉
    嗜癖は心の哲学から見たとき,その嗜癖的欲求が理由ではなく,強迫として作用する点に本質的な特徴がある。嗜癖者は嗜癖的欲求によって,その意志と行為が理由応答性を失う。ただし,嗜癖的欲求は外力とちがって,意志にたいして誘惑として働き,嗜癖的行動へと意志を方向づける。しかし,結局は,有無を言わせぬ強迫として働くため,嗜癖的欲求は内なる異物であり,われわれはそれへの十全な所有者性を欠く。嗜癖は,嗜癖的欲求によって嗜癖的行動への意志が形成される場合,理由応答性の欠如の点で意志の弱さに似るが,意志の弱さでは理由応答能力がなお存在するとされるのにたいし,嗜癖ではその能力がないとされる点で,重要な違いがある。この違いにより,意志の弱さには責任があり,嗜癖的行動には責任がないとされることになる。嗜癖が人生の意味にまで高まる実存的依存となる場合があるが,そのような嗜癖の生はその害がひどくなければ,健常な生より善い可能性がある。

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Addictive disorder from a viewpoint of philosophy of mind
信原 幸弘
東京大学名誉教授