臨床精神医学第50巻第7号

精神障害における存在論と認識論─DSM委員会と精神病理学の古典と─

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  • 大前 晋(虎の門病院)
  • 発行日:2021年07月28日
  • 〈抄録〉
    実用主義あるいはプラグマティズム,pragmatism,大前 晋
    内因性精神障害すなわち統合失調症や双極性障害では,基礎にある身体疾患の存在が明らかでない。まず,存在するのかしないのかが明らかでない。さらに,存在するとしても,そのありのままをわれわれが認識できるかどうかが明らかでない。精神障害と身体疾患の関係には,少なくとも三通りの考えかたがある。第一は実在主義あるいは生物学的還元主義で,基礎にある身体疾患は,われわれが知っていようといまいと存在するという立場である。第二は構成主義あるいは懐疑論的理性主義で,基礎にある身体疾患など存在しない,精神障害はわれわれが構成した社会的レッテルであり,時として有害な神話であるという立場である。第一と第二のあいだにある第三の道とでもいえる立場が,実用主義あるいは功利的実用主義である。それは次のような立場である。たしかに精神障害の基礎に身体疾患は存在するだろうが,実在主義と違って精神障害の類型と身体疾患の単位は必ずしも対応しない。しかし精神障害は予後と治療結果・効果の見込み,そして生物・社会的相関にまつわる説などの有用な情報を与えてくれる。Francesは第三の功利的実用主義の立場をとるが,Kendlerは第一をみなおして修正実在主義あるいはソフト実在主義とでもいうべき立場をとる。これはかつてのJaspersとSchneiderの論争を思い起こさせる。Kendlerが現代のJaspersならば,Francesは現代のSchneiderである。

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Ontology and epistemology of mental disorder. – DSM committee and the classics of psychopathology.
大前 晋
国家公務員共済組合連合会虎の門病院