臨床精神医学第48巻第12号
プラダー・ウィリー症候群の行動障害と精神医学的併存症
電子書籍のみ
- 中川 東夫・他(七尾松原病院)
- 発行日:2019年12月28日
- 〈抄録〉
プラダー・ウィリー症候群(PWS)は,染色体15q11-q13の異常によって引き起こされる遺伝的に決定された神経発達障害である。PWSは,発達段階で症状が変遷し,幼児期~思春期に特異な感情特性や行動障害,青年期~成人期には気分障害,精神病性障害を併存することがある。精神病性障害の発症率は,父性由来の欠失型よりも母性片親性ダイソミー(mUPD)の患者で高く,一過性の経過をたどることが多い。筆者らは,かんしゃく発作,衝動行為,スキンピッキング,食行動異常,強迫行為などの行動障害,不安,過度の心配,興奮,気分変調,関係被害妄想,人物誤認などの精神症状を呈したmUPDの可能性が高い30歳のPWSの女性症例を経験した。幼児期からPWS特有の諸症状がみられたが,16歳時にかんしゃく発作,不安,過度の心配,衝動行為,スキンピッキングが顕在化し,経過とともに神経症性障害から気分障害へ,さらに精神病性障害を中心とした状態像へとシフトした。そのため,診断は発達段階ごとにICD-10診断基準に準拠し暫定的に行った。本稿では,本例の臨床経過と治療過程を通して,行動障害と精神障害の特徴・変遷,精神医学的併存症,治療反応性を考察し,併せてPWSの疫学,遺伝的タイプ,内分泌系・中枢神経系との関連,診断についても論じた。
詳細
Behavioural disorders and psychiatric comorbidity in Prader-Willi syndrome: A case suspected due to chromosome 15 maternal uniparental disomy
中川 東夫 池原 理恵 岡田 豊人 丸山 晃弘
七尾松原病院