臨床精神医学第48巻第10号
自閉スペクトラム症における創造性─傑出人に注目して─
電子書籍のみ
- 加藤 敏(小山富士見台病院)
- 発行日:2019年10月28日
- 〈抄録〉
ハンス・アスペルガーは,アスペルガー症候群の概念の基礎になった自閉性精神病質の診断分類上の位置づけを行い,クレッチュマーのいうシゾチーメ(統合失調気質)に類似すると結論づけている。この指摘は,独特な創造力をもつ「自閉性知能」の理解を進め,アスペルガー症候群/高機能自閉症の創造性を考えるうえで示唆に富む。牛締めつけ機を開発して自己の拠り所を創出したグランディンと哲学者ウィトゲンシュタインの自伝を参照しながら,クレッチュマーが提唱したシゾチーメ,シゾイドにおける「周囲に対する感受性が亢進している高感性」,また天才に共通する要因としてあげられる「精神の全精力をただ1つの焦点に集中させる能力」に注目して,自閉スペクトラム症における創造性について論じた。アスペルガー症候群/高機能自閉症と操作的に診断される天才は「極めつきの知性と極めつきの感性」をもつものが多く,現行の精神疾患分類をはみ出す可能性があることについても論じた。
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Creativity in cases of autistic spectrum disorder
加藤 敏
医療法人心救会 小山富士見台病院