肝胆膵第80巻第2号
慢性膵炎非代償期に蛋白分解酵素阻害薬は不要か
電子書籍のみ
- 伊藤 鉄英,他(福岡山王病院)
- 発行日:2020年02月28日
- 〈要旨〉
蛋白分解酵素阻害薬であるメシル酸カモスタットは強力なトリプシン阻害作用を有する低分子量の化合物で,異所性に活性化されたトリプシン活性を阻害することで膵炎の発症・進展を抑制するため,上腹部痛や背部痛などの膵炎症状を有する早期および代償期の慢性膵炎患者に主に用いられることが多い.メシル酸カモスタットはトリプシン阻害作用のほかに,膵組織中のmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)の発現を抑制し,膵内への単球の浸潤やtumor necrosis factor(TNF)-αの産生を抑えることで,慢性膵炎の進展を抑制することが報告されている.しかし,メシル酸カモスタットは細胞外基質の産生・分解には作用しないため,膵の線維化が完成している非代償期の慢性膵炎ではメシル酸カモスタットの効果は期待はできない.非代償期の慢性膵炎では膵外分泌機能補充療法,膵性糖尿病および栄養管理が最も必要である.
詳細
Is a protease inhibitor not required in patients with uncompensated chronic pancreatitis?
伊藤 鉄英*1,2 宜保 淳也*3 藤山 隆*1 大野 隆正*4 藤森 尚*4
*1福岡山王病院膵臓内科・神経内分泌腫瘍センター
*2国際医療福祉大学大学院医学研究科消化器内科
*3麻生飯塚病院消化器内科
*4九州大学大学院医学研究院病態制御内科・肝胆膵内科