肝胆膵第80巻第2号
膵炎関連遺伝子異常はどこまでわかったか
電子書籍のみ
- 濱田 晋,他(東北大学)
- 発行日:2020年02月28日
- 〈要旨〉
膵炎関連遺伝子異常の同定は膵酵素であるカチオニックトリプシノーゲンの変異に端を発する.トリプシン活性の制御に関わる遺伝子異常に加え,さまざまな膵酵素の変異は多様なメカニズムで膵炎発症に関わる.酵素活性の変化以外に,小胞体ストレス増加は新たな膵炎発症メカニズムとして注目されている.次世代シークエンスに代表される解析技術の進歩はスピードの向上だけでなく,これまで解析が困難であった大きな遺伝子の全長解析や複数遺伝子の網羅的解析を可能にした.なかでも,全エクソーム解析はこれまで未知であった膵炎関連遺伝子異常の特定につながる手段として期待されている.増加を続ける膵炎関連遺伝子異常の全貌を明らかにするためには,人種差を考慮して国際共同研究の枠組みでの推進も不可欠である.原因遺伝子の特定は診断のみならず,疾患原因に対する根本的な治療法開発の重要な基盤である.
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Pancreatitis and gene mutations
濱田 晋 正宗 淳
東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野