臨床精神医学第53巻第5号
単純型統合失調症(単純型荒廃障害)とスキゾイドパーソナリティ障害との鑑別を要したディオゲネス症候群の1症例
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- 中川 東夫(恵寿総合病院)
- 発行日:2024年05月28日
- 〈抄録〉ディオゲネス症候群(DS)は,重度のセルフ・ネグレクト,溜め込み行為,社会的孤立,洞察力の欠如,援助拒否を特徴とする複合的な病態を指す。DSは,人格特性,ストレス,社会・心理学的背景など複数の要因によって,ひきこもりの生活様式,生活環境や社会的規範の放棄を招き,約半数がさまざまな精神疾患との併存,あるいは関連性のあることが示されている。他方,単純型統合失調症(SS)は,残遺型統合失調症に特有な陰性症状が緩徐に進行し,それに伴ってADLやQOLが低下する。一方,スキゾイドパーソナリティ障害(ScPD)は,社会的関係からの離脱,対人関係場面での情動表現の範囲が限定され,孤立した行動を選択する。DS,SSおよびScPDの三者の間には現象学的類似性があり,臨床的,社会的,そして倫理的に多くの課題を抱えている。SSの診断項目は現行のICDやDSMの操作的診断基準で削除され,診断横断的アプローチにおいてScPDとの境界が不鮮明な場合がある。筆者は,DSを呈した50歳代の男性で,SSとScPDとの鑑別を要した1症例を経験した。本稿では,三者の症候学的特徴,診断学的位置づけ,現象学的類似性を述べ,本症例の臨床学的特徴,診断,鑑別診断について考察した。
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A case of diogenes syndrome requiring differentiation between simple schizophrenia (simple deteriorative disorder) and schizoid personality disorder
中川 東夫
社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院