臨床精神医学第53巻第5号
ステップファミリーの子どもたちの困難─日本に支配的な離婚・再婚家族観がリスクを隠蔽する─
電子書籍のみ
- 野沢 慎司(明治学院大学)
- 発行日:2024年05月28日
- 〈抄録〉親の新しいパートナーとの関係をもつ子どものいる家族,「ステップファミリー」の研究は,当事者を含む社会全体が旧来の離婚・再婚家族観に支配されている事実を浮き彫りにしてきた。そうした社会的要因が,当事者,とりわけ子どもたちに,困難や苦痛をもたらしている事実が見逃されてきたと主張する。旧来の家族観は,両親の離別によって「ひとり親」となり,親の再婚によって「ふたり親」が再現されてできるステップファミリーも初婚核家族と同様の家族だとみなす傾向が強い。欧米では長年にわたる家族法制度改革によって離婚・再婚後の親子関係のあり方が変わり,親子関係の「継続モデル」が普及した。しかし,家族観がほとんど変化していない日本では,親の「代替モデル」が根強い。そのため,精神医学などの臨床現場でも,離婚・再婚による親子関係の断絶と代替が子どもたちにもたらす困難が見逃され,適切な対応ができていない可能性がある。
詳細
Children of stepfamilies facing difficulties –how conventional divorced and remarried family models in Japan make their risk invisible–
野沢 慎司
明治学院大学社会学部社会学科