臨床精神医学第53巻第5号
地域でも持続可能な,包括的な周産期メンタルヘルスケアシステムの構築を目指して
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- 堀川 直希(のぞえの丘病院)
- 発行日:2024年05月28日
- 〈抄録〉地域で安心して子どもを産み育てていくためには,誰もが直面し得る周産期メンタルヘルスの問題について議論を避けて通ることはできない。自殺による妊産婦死亡率の高さと精神疾患との関連が指摘され,令和4 年10 月に閣議決定された自殺総合対策大綱において,重点施策として妊産婦への支援の充実が具体的に明記された。また,子ども虐待予防の観点からも,周産期などのより早期の段階から家族を支援する必要性が指摘されている。予測以上に進む少子化という社会背景を考えると,それぞれの地域の実情に合わせて妊産婦や子どもたちを包括的に支援するための周産期メンタルヘルスケアシステムを作ることは,待ったなしの社会課題といえる。のぞえの丘病院(以下,当院)では,2019年9月に新築移転して以降,地域の単科精神科病院でも可能な,包括的な周産期メンタルヘルスケアシステムの構築に向けた取り組みを行っている。母子同室入院を試験的に開始し,精神科医療機関として初めて産後ケア事業にも参加するなど,さまざまな支援を組み合わせた周産期メンタルヘルスケアシステムとして,“のぞえモデル”を展開している。一方で,地域で周産期メンタルヘルスケアシステムを構築することは精神科の単一医療機関で行うことは不可能である。それぞれの医療機関が,地域の実情に合わせて可能な範囲で役割を担い,相互に補完する必要がある。当院が実践する“のぞえモデル”の取り組みを紹介し,地域でも持続可能な,包括的な周産期メンタルヘルスケアシステムを構築するために必要なことや課題について述べる。
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To create an integrated perinatal mental health care system
堀川 直希
のぞえの丘病院