臨床精神医学第53巻第1号
認知症における日中の眠気
電子書籍のみ

- 三島 和夫(秋田大学)
- 発行日:2024年01月28日
- 認知症の患者では,睡眠・覚醒系神経核とその投射系のほか,生物時計中枢である視交叉上核,大脳皮質などに広範に器質障害が生じるため,睡眠の質および量,リズムが多様に障害される。そのため睡眠・覚醒障害は認知症の行動・心理症状の中で最も頻度の高いものの一つである。認知症でみられる睡眠・覚醒障害は,不眠症,睡眠関連呼吸障害,睡眠関連運動障害,睡眠時随伴症,概日リズム睡眠・覚醒障害,せん妄など多岐にわたる。睡眠関連症候には,不眠,過眠(眠気),リズム障害,随伴行動障害,運動・感覚症状などがあるが,自覚症状を正確に陳述できず,また睡眠ポリグラフ検査や反復睡眠潜時検査などが実施できないこともあり,鑑別診断が非常に難しいことが多い。本稿のテーマである日中の眠気(過眠)はこれまで低質な睡眠の結果として認識されることが多かったが,近年の研究から認知症の病態に密接に関係した症状もしくは早期兆候であることが明らかにされつつある。
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Excessive daytime sleepiness in dementia
三島 和夫
秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座