臨床精神医学第53巻第1号
ナルコレプシーにおける過眠の病態基盤
電子書籍のみ
- 千葉 滋・他（茨城県立こころの医療センター）
- 発行日：2024年01月28日
- ナルコレプシーは最新の睡眠障害国際分類（ICSD-3）においてタイプ1，タイプ2の2種類に分けられる。タイプ1では脳脊髄液中のオレキシンA濃度の低下が認められ，自己免疫による後天的なオレキシン神経細胞の破壊が，この疾患の主症状である日中の過度な眠気，カタプレキシー（情動脱力発作），入眠時の幻覚と睡眠麻痺，夜間の熟眠困難の原因であると考えられている。対照的に，タイプ2はより定義が難しく，表現形も多様であり疾患特異的なバイオマーカーはほとんど見つかっていない。また，ナルコレプシーでは，注意欠如・多動性障害（ADHD）の併存が生じやすい可能性がある。ナルコレプシーの治療法は，覚醒系薬剤と抗カタプレキシー剤を用いた対症療法が主体であるが，低分子のオレキシン受容体アゴニストの開発も進んでおり，今後ナルコレプシーをはじめとした中枢神経系の疾患にも適用できるかもしれない。
詳細
Pathophysiology of hypersomnia in narcolepsy
千葉 滋＊1,2,3 神林 崇＊1,2
＊1茨城県立こころの医療センター睡眠・覚醒障害外来
＊2筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構
＊3南埼玉病院精神神経科