臨床精神医学第51巻第2号

金閣放火事件被告人A―司法精神医学における症例報告の意義と課題―

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  • 村松 太郎(慶應義塾大学)
  • 発行日:2022年02月28日
  • 〈抄録〉
    適切な限界を定めるためには誰かが一度は限界を超えてみなければならない。では症例報告における匿名化などの制約=限界が適切か否かはいかにすれば判断できるのか。現代ではもはや限界を超えるという試みは許されないが,昭和の時代に金閣放火事件被告人について出版された鑑定書や論文などは,限界を大きく超えた開示が実現している稀有な実例である。すべて実名で事実が克明に記されたこれらの文献は,症例報告において,何を秘匿し何を開示するかを議論するための貴重な材料となっている。開示しすぎれば個人の秘密の侵害になる。秘匿しすぎれば科学論文としての価値は消滅する。一定の秘匿は必要であるが,それによって失われるものの大きさを,著者も読者も常に意識していなければならない。症例報告で伏せられた事実を視野に入れない医学は,精神病の他害行為を視野に入れない医療と同様,闇を見ずに光を語ろうとすることに等しい。

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Case A, who set fire to Kinkaku-ji –an essay on forensic case report–
村松 太郎
慶應義塾大学医学部精神神経科