臨床精神医学第51巻第2号
精神医学における症例報告の意義
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- 糸川 昌成(東京都医学総合研究所)
- 発行日:2022年02月28日
- 〈抄録〉
症例報告の一般的な意義として,診断や治療で興味深い点があった症例や科学的示唆を持つ症例を広く医療関係者で共有する点があげられる。症例報告から出発してWHOの疾患分類に記載される疾患概念まで発展した例として,川崎病を紹介する。近年,エビデンス重視の医学界で症例報告の価値が低くみられる理由を,エビデンスに基づく医療(EBM)が医療経済政策的な要請と医療の科学化を目指している観点から解説した。一方,精神疾患がほかの診療科疾患と異なり類型であることから,精神疾患の症例報告には精神医学固有の意義も発生する。類型と種の違いについて解説し,症例報告が遅発緊張病の診立てを助けた例を紹介した。
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Significance of case report in psychiatry
糸川 昌成*1,2
*1東京都医学総合研究所統合失調症プロジェクト
*2都立松沢病院精神科