臨床精神医学第51巻第2号
神経心理学における歴史的症例報告が精神医学に与えたインパクト―症例Phineas Gageを例として―
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- 三嶋 亮・他(京都大学)
- 発行日:2022年02月28日
- 〈抄録〉
Phineas Gageは,1848年の事故で吹き飛んだ鉄棒が左頬部から頭頂部を貫通し外傷性脳損傷を負った米国人男性である。医師Harlowによる報告は,「もはやGageではない」という言葉でも有名な,前頭葉損傷後の人格変化が初めて記載された歴史的症例である。20世紀後半には前頭葉機能への関心から改めて症例が注目されたが,そのなかで一次資料からはかけ離れたGageの姿が描かれていたことも明らかになっている。前頭葉の局在機能は何かという医学的立場からだけでなく,症例がどのように記述されてきたかという医学史的立場からも興味深い症例であり,その現代的意義を論じた。
詳細
The impact of historical case report in neuropsychology on psychiatry –the case of Phineas Gage–
三嶋 亮 村井 俊哉
京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座(精神医学)