臨床精神医学第50巻第9号
昏迷,ひいては緊張病症候群の概念を広げすぎてはいないか―昏迷の原型である緊張病性昏迷とは擬死反射である―
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- 中安 信夫(原病院)
- 発行日:2021年09月28日
- 〈抄録〉
擬死反射とは生命危急的事態に対処すべく動物に生得的に具備された自己危急反応であるが,動物における擬死反射の研究(西野)によれば,その性状は筋強直性無動を主徴するものであって蝋屈症もカタレプシーも呼吸停止もその随伴現象であり,また主徴である筋強直性無動を形成する神経学的機序も明らかにされている。その性状は統合失調症における緊張病性昏迷と瓜二つであるが,統合失調症においては〈「自己保存の危機」の意識下・無自覚的認知ないし意識上・自覚的認知〉という架空の生命危急的事態が生じて偽因性の原始反応(自己危急反応)として緊張病性昏迷が生じるという成因論に関する自説を併せ考えるならば,緊張病性昏迷とは擬死反射そのものであると結論づけられた。この結論に基づいて,近年における緊張病症候群(カタトニア)の概念の拡大に対して,ことにカタトニアが躁病において統合失調症以上に高頻度で認められるということを強く主張しているFink Mらの論説を取り上げて,それは緊張病症候群の概念の内包と外延の両面において誤ったものであると批判した。
詳細
Isn’t the concept of stupor, and hence of catatonic syndrome, overextended ? –catatonic stupor as a prototype of stupor is death feigning–
中安 信夫
医療法人原会原病院