臨床精神医学第50巻第9号

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  • 特集/ライフコース全体で考えるメンタルヘルス
  • 発行日:2021年09月28日
  • <企画趣旨>
    メンタルヘルスを語るうえで,当事者(患者さん)のライフコースを全体的な視点で扱うことは重要である。これは特に精神医学において,縦断的な病態把握およびステージに応じた介入を継続することが,当事者利益を有効にもたらすと考えられるからである。にもかかわらず,現在の日本においてはライフステージごとに分断されたメンタルヘルスの議論に終始することも多い。具体的には,健康寿命の延長に伴う課題,小児・思春期から成人精神疾患へのトラジェクトリー,リスク保持者に対する予防を含めた診断前対応など,多様なトピックが存在するにも関わらず,十分な議論がされているとはいいがたいのが現状である。今回は当事者,アカデミア,看護,地域医療などさまざまな視点をもとに,小児から後期高齢者まで含めたライフコース全体で日本のメンタルヘルスを考える。扱うライフステージや医療における立場の異なる観点からのメタ認識を持つことで,日本のメンタルヘルスをよりよい方向へ発展させることができると考える。

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<目次>
概 論 (Johns Hopkins University)澤 明・他

―ライフコースアプローチについて―
診断前サポートの重要性 (国立精神・神経医療研究センター)金 吉晴
アルツハイマー病のトラジェクトリー ―ライフコースアプローチのモデルとして― (東京大学)新美 芳樹・他
精神疾患における早期介入と予防―機能的転帰の改善に向けて― (国立精神・神経医療研究センター)住吉 太幹
児童青年期から成人期までのメンタルへルス―ライフコースアプローチの視点から― (発達障害クリニック附属発達研究所)神尾 陽子

―ライフコースアプローチをマルチステークホルダーの視点に生かして―
看護学の視点からのアプローチ (鳥取看護大学)遠藤 淑美
非営利・独立・超党派の政策シンクタンクの役割―マルチステークホルダーの連携促進― (日本医療政策機構)栗田 駿一郎・他
地域連携強化のための政策 (国立精神・神経医療研究センター)久我 弘典・他
精神保健福祉サービスの立案と提供にサービス利用者の視点を活用する (日本医療政策機構)杉浦 寛奈・他
当事者視点の精神医学知―医療人類学的考察― (慶應義塾大学)狩野 祐人・他

―ライフコースアプローチ:国際的視点から―
ライフコースアプローチとグローバルヘルス―複雑化する世界とSDGs― (長崎大学)茅野 龍馬
当事者とともにあゆむ,ジョンズホプキンス大学でのアカデミアの活動 (ジョンズホプキンス大学)Yukiko Y Lema
アメリカとの比較と日本が取り得る戦略 (国立精神・神経医療研究センター)成田   瑞

論 説
昏迷,ひいては緊張病症候群の概念を広げすぎてはいないか―昏迷の原型である緊張病性昏迷とは擬死反射である― 中安 信夫

書 評
マクヒュー/スラヴニー 現代精神医学 第二版〔ポール・マクヒュー,フィリップ・スラヴニー著/澤  明 監訳〕 松下 正明