臨床精神医学第51巻第8号
強迫性障害に対する認知行動療法の神経生物学的基盤
電子書籍のみ
- 高橋 純平(千葉市立青葉病院)
- 発行日:2022年08月28日
- 〈抄録〉
強迫性障害(OCD)に対する治療法として,認知行動療法(CBT)はその有効性が実証されているにも関わらず,症状を改善させる神経生物学的メカニズムについては不明な点が多かった。近年,MRIを中心とした脳画像検査技術が飛躍的に進展するに伴ってOCDの病態仮説が論じられるようになった。1998年にSaxenaらが眼窩前頭皮質-線条体-淡蒼球-視床-皮質の回路からなるOCDループを提案し,OCDの重要な病態仮説として広く認知されてきたが,最近では辺縁系や小脳等を含む広範で複雑なネットワークの異常も指摘されている。それらをふまえて,CBTが眼窩前頭皮質,前帯状回,尾状核,視床などOCDの病態に関連する領域の神経ネットワークを変化させ得るという脳画像研究の知見が集まってきている。それらはCBTの治療予測因子として利用できる可能性だけでなく,CBTにおける患者の治療的な変化を後押ししてくれる可能性もある。
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Neurobiological basis of cognitive behavioral therapy for obsessive-compulsive disorder
高橋 純平
千葉市立青葉病院児童精神科