臨床精神医学第51巻第8号
心的外傷後ストレス障害に対する認知処理療法の脳神経基盤および身体疾患のメカニズム
電子書籍のみ
- 伊藤 正哉・他(国立精神・神経医療研究センター)
- 発行日:2022年08月28日
- 〈抄録〉
認知処理療法(Cognitive Processing Therapy:CPT)は,心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic stress disorder:PTSD)に対して最も強いエビデンスを示す心理療法の一つである。本論文ではCPTに関連する脳神経基盤および身体疾患について,現時点で関連する知見をまとめて紹介したうえで,今後の展望について論じる。脳神経基盤としては,中央実行ネットワーク,デフォルト・モード・ネットワーク,そして顕著性ネットワークを含む包括モデルがPTSDと関連していることが示唆されており,実際,PTSDへの認知処理療法によりそれらが変化することが示されている。身体症状としては,PTSDは冠動脈性心疾患や自己免疫疾患のリスクを高めることが報告されている。これらは元々の気質や,PTSD発症後の行動習慣と相互作用して影響していると考えられ,CPTはその一部に関与して,PTSDや身体疾患を改善すると想定される。
詳細
Putative mechanisms of neurological basis and physical diseases for cognitive processing therapy for posttraumatic stress disorder
伊藤 正哉 杉田 創 矢部 魁一
国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター