肝胆膵第79巻第5号
ヒトiPS 細胞由来肝星細胞の作製と細胞間相互作用を介した肝細胞の成熟化
電子書籍のみ
- 三好 正人，他（東京医科歯科大学）
- 発行日：2019年11月28日
- 〈要旨〉
ヒトiPS細胞は体内のすべての細胞に分化しうる能力があり，疾患病態を再現する新たなモデルとして病態解明にも寄与しうることがいくつかの臓器で報告されてきた．今回われわれは，ヒトiPS細胞から肝星細胞様細胞（iPS-HSC）を誘導する方法を新規に構築した．iPS-HSCは，遺伝子発現，ビタミンA貯蔵能，炎症刺激による活性化能などの機能面において，生体のヒト肝星細胞に類似した形質を呈した．iPS-HSCとiPS細胞由来肝前駆細胞（iPS-HPC）を共培養すると，iPS-HPCの肝細胞としての成熟化が認められ，転写因子であるLHX2をiPS-HSCにおいて強制発現させることで，共培養によるiPS-HPC成熟化がさらに促進された．LHX2はiPS-HSCにおいて細胞外マトリックスの発現プロファイルを変化させることで，肝前駆細胞成熟化を促進することが示された．今回誘導したiPS-HSCは細胞間相互作用を利用した肝細胞成熟化に利用できるのみならず，肝線維化研究の新規モデルとして応用可能である．
詳細
Hepatocytic maturation induced by cell-cell interaction between human iPS-derived hepatic stellate cells and human iPS-derived hepatic progenitors
三好 正人＊1 柿沼 晴＊1,2
＊1東京医科歯科大学消化器内科
＊2同 大学院医歯学総合研究科肝臓病態制御学