肝胆膵第79巻第5号

肝癌微小環境における肝星細胞の細胞老化随伴分泌現象と癌促進機構

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  • 大谷 直子(大阪市立大学)
  • 発行日:2019年11月28日
  • 〈要旨〉
    癌微小環境における線維芽細胞は性質が変化し,癌関連線維芽細胞(cancerassociated fibroblast:CAF)として,癌細胞の増殖を助長することが知られている.筆者らは肥満関連肝癌のモデルマウスを用いた研究で,肝腫瘍部では,活性化した肝星細胞が,コラーゲンはほとんど産生しないものの,癌促進作用のある炎症性サイトカインやケモカイン,細胞外マトリクス分解酵素(プロテアーゼ類),増殖因子など,さまざまな分泌蛋白質を産生する細胞老化随伴分泌現象(senescence-associated secretory phenotype:SASP)を起こし,CAF化していることを見いだした.筆者らは肝星細胞が細胞老化とSASPを起こした原因として,高脂肪食摂取により増加したグラム陽性腸内細菌が産生するデオキシコール酸が,腸肝循環により肝臓に到達し,ROSの過剰産生を介して細胞老化を誘導すること,さらにグラム陽性菌の細胞壁成分であるリポタイコ酸が,デオキシコール酸と協調しながらSASP遺伝子やCOX-2の発現を誘導することを明らかにした.COX-2の誘導により過剰産生されたPGE2 が,そのレセプターEP4を発現する免疫細胞に作用し抗腫瘍免疫を抑え,肝癌を進展させることがわかった.今後EP4アンタゴニストは分子標的薬候補となる可能性がある.

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詳細

Senescence-associated secretory phenotype (SASP) and tumor promoting mechanism by hepatic stellate cells in liver tumor microenvironment
大谷 直子
大阪市立大学大学院医学研究科分子生体医学講座病態生理学