臨床精神医学第47巻第3号
ドパミンD3受容体遮断による統合失調症の新たな治療の可能性
電子書籍のみ
- 井上 善文(大日本住友製薬株式会社)
- 発行日:2018年03月28日
- 〈抄録〉
近年,精神疾患におけるD3受容体の役割が次第に明らかにされ,D3受容体に選択的かつ内因性ドパミンに負けいない強い親和性のある阻害薬の有用性が注目されている。PET研究によれば,ブロナンセリン,cariprazine以外に臨床用量でD2,D3受容体を同程度占有することが示された抗精神病薬は無い。D3受容体アンタゴニストやD3受容体ノックアウトマウスを用いた研究により,D3受容体阻害作用が社会機能まで含めた認知機能を改善し,機能的帰結,生活の質,病からの回復といった観点から,またリハビリテーションの増強因子としても重要である動機づけの低下を回復させ,さらにはグリア細胞を介した作用機序により脳内炎症を抑制し得る可能性が示唆されている。統合失調症の治療が患者の機能レベルの改善・パーソナルリカバリーにまで焦点を当てつつある今日,D3受容体阻害作用の実臨床での役割を改めて見極める必要があると考える。
詳細
A novel approach with dopamine D3 receptor blockade in the treatment of patients with schizophrenia
井上 善文
大日本住友製薬株式会社メディカルアフェアーズ部