臨床精神医学第47巻第3号
アセナピンはなぜ舌下錠なのか
電子書籍のみ
- 佐藤 靖・他(大館市立総合病院)
- 発行日:2018年03月28日
- 〈抄録〉
1970年代,アセナピンマレイン酸がオランダのOrganon社(現MSD)により合成された。有望な薬理学的プロフィールを持ち,当初,経口剤として開発されたが,肝臓および消化管での初回通過効果が大き過ぎた。そのため,生物学的利用率(BA)がほとんどなく,臨床試験の結果は思わしくなく,一時開発が中断された。しかし,初回通過効果を受けずにすむ舌下投与で投与するためのZydis技術を導入し,舌下剤として再開発された。そのため,従来の抗精神病薬と異なり,一定時間舌の上に置く必要性を説明するなど服薬方法の心理教育が必要である。海外のメタ研究では,副作用の少ない薬剤の代表格であるアリピプラゾールと同様に,体重増加,錐体外路症状,プロラクチン上昇,QT延長において,プラセボとの有意差はなかった。薬物動態学的な工夫で,有望な薬力学的プロフィールを持つアセナピンの創薬に成功したことは,創薬のイノベーションにふさわしいと思われた。
詳細
Why was asenapine developed as sublingual tablets?
佐藤 靖1) 古郡 規雄2)
1)大館市立総合病院神経精神科
2)弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座