臨床精神医学第47巻第3号
ナルメフェン-ハームリダクションのためのオピオイド拮抗薬-
電子書籍のみ
- 木村 充(国立病院機構久里浜医療センター)
- 発行日:2018年03月28日
- 〈抄録〉
アルコール依存症の患者の中で実際に治療を受けるものは10%程度であり,治療ギャップが大きい。アルコール依存症の治療に,海外では主にオピオイド拮抗薬であるナルトレキソンが使用されてきた。ナルトレキソンは断酒維持だけでなく,飲酒量を低減する効果がある。2013年に,ヨーロッパで新たなオピオイド拮抗薬であるナルメフェンがアルコール依存症の飲酒量低減を目的として承認された。ナルメフェンもオピオイドμ受容体を強く阻害するが,κ受容体の部分的アゴニストとして作用する点でナルトレキソンと異なっている。ナルメフェンを必要時に頓服として服用する投与方法で行われたRCTで,多量飲酒日数,総飲酒量の低減に効果があることが報告された。日本でも治験が行われ,同様の効果が確認された。飲酒量低減を目標とするハームリダクションの考え方は治療ギャップを少なくすることに有効と考えられ,今後の治療オプションとして期待されている。
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Nalmefene: Opioid antagonist for harm reduction
木村 充
国立病院機構久里浜医療センター精神科