臨床精神医学第52巻第1号
最新の研究成果で老年期のうつ病診療は変わるか
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- 福原 竜治・他(鹿児島大学)
- 発行日:2023年01月28日
- 〈抄録〉
人口の高齢化が進むにつれ,老年期うつ病への対応も重要な課題となってくる。老年期は加齢に伴う脳機能や身体機能の低下などの生物学的変化に加え,配偶者や友人,経済力,社会的地位などを通じて社会心理学的変化が生じる世代であり,この年代はうつ病をきたしやすいといえる。しかし老年期うつ病は薬物治療抵抗性であることや再発が多いこと,認知症との鑑別など,年代特有の問題がある。老年期におけるうつ病と認知症の関係は非常に複雑であるが,症状の共通性もあり近年は連続体として捉える視点も提唱されている。老年期うつ病においては認知症を引き起こす器質的変化が強く影響し得ることが,最新の研究によって明らかになってきている。本稿では老年期うつ病と認知症の関連に焦点を定めたいくつかの疫学的研究に触れ,老年期うつ病におけるアミロイド等の認知症バイオマーカーを用いた研究等の,老年期うつ病の診療への影響について述べる。
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The impact of the latest research findings on the diagnosis and treatment of depression in older adults
福原 竜治 中村 雅之
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科精神機能病学分野