臨床精神医学第52巻第1号
成人期の自閉スペクトラム症者にみられる抑うつの診断と対応
電子書籍のみ
- 佐々木 雅明(虎の門病院分院)
- 発行日:2023年01月28日
- 〈抄録〉
自閉スペクトラム症(以下,ASD)者は抑うつを経験しやすい。この見解は複数の研究結果によって支持されている。一方,私たちはその臨床的特徴について多くを知らない。本稿はこのジレンマを解消するため,成人期のASD者の抑うつに言及した先行文献を参照し,その臨床的特徴を整理した。ASD者は自身の感情を察知しにくく,また察知できたとしてもそれを他者に伝えることが難しい。このような特徴のためにASD者の抑うつでは気分の落ち込み,罪責感など一般的な抑うつ症状を認めにくい。その代わりとして自律神経症状,ヒステリー機制,こだわりの変化などASD者特有の特徴を伴う。ASD者の抑うつは急性抑うつと慢性抑うつとに二分され,急性抑うつではストレッサーの同定とストレッサーからの離脱が,慢性抑うつではdemoralizationへの手当てがそれぞれ治療の根幹をなす。
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Depression in adults with autism spectrum disorder: diagnosis and management
佐々木 雅明*1,2
*1国家公務員共済組合連合会虎の門病院分院精神科
*2聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科